建築都市文化協会

一般社団法人建築都市文化協会

Architecture and Urban Culture Association

Design meeting information

今回の建物の取組みは、大阪・関西万博において、これまでに経験したことの無い林の中にいるような癒しの空間の演出で若者から人気のあるUAE館の構造設計について紹介を致します。

敷地面積:3650㎡、建築面積:2013㎡、総鉄骨重量:約550t、500㎜厚の底盤基礎。

透過性の高いガラス越しにナツメヤシの端軸で覆った柱が群生し、反曲の見附けの薄い屋根形状により柱の巨大さを効果的に表現。

対象建物は、R社をCMとして有名建築家+構造設計者のコンセプトの下で実施設計近くまで設計を進めていました。しかし、建物規模などから工事期間が間に合わない判断がなされた。2024年3月より、そのコンセプト下で設計企業体であるEarth to Ether Design Collectiveにて短工期での面積や高さの見直し、材料調達および施工方法を踏まえたConstruction designがなされた。約3カ月程度で設計変更を行い、2025年3月末の建築検査、4月上旬のプレオープンに間に合わせた。その構造設計を担った株式会社アーサの藤本取締役に取組みをお聞きした。(A:藤本、Q:持田)

Q)設計変更ではどの様な変更をされたのですか?

A)柱180本程度を90本程度に削減するなどの面積の減、7人の王子の内の1名から反曲の屋根頂上の高さを3階程度から5階程度に高さの増がありました。

Q)詳細な対応としては?

A)元々屋根の見付けを薄くするため2mグリッドの格子屋根フレームに対し、梁部材中間にも柱を設ける柱の位置の自由度の高い構造計画でした。それに対し、2mグリッドの交点にのみ柱を設定し、自由度を高めるためにグリッド側を1mずらした形態とし、柱の位置の自由度を高める工夫を行いました。柱は在来露出柱脚にてキャンチ柱とし、600~800φ肉厚は6~9㎜程度です。柱仕上げの外径は、1500~2000φとなっています。反曲の屋根梁と柱頭の接合部のデイテールがすべてで異なり、それらを構造耐力、施工生産上で出来るだけ合理的に処理する点に苦労した。

Q)Construction designでの特徴は?

A)鉄骨の加工製作期間が非常に短いので、基本的に市中買いで材料を供給させました。柱長さ10m程度を、福井の鉄骨ファブのKINOSHITAにて加工し、和歌山の鉄鋼メーカー工場で柱ボルト接合とヤシの木の仕上げを施し、15m程度のものを万博現地に搬送し建て方をした。

Q)短期間の設計業務の状況は?

A) 設計企業体であるEarth to Ether Design Collectiveを含めた施工会社との打合せを、週1回R社にて行い、多くの打合せをリモートで活用した。当社は、常時4名(図面製作1名)で対応した。

Q)設計企業体の特徴は?

A) 某スーパーゼネコンOBを中心とする以前からの連携経験のある設計者、施工者の体制で短工期での作品つくりを実現できた。

Q)今回の作品つくりでのポイントは?

A)CMの担当者の判断力が極めて優れており、設計者施工者共に各々の可能な取組みを尊重して交渉してくれた。

今回は、短い時間でありましたが取材に協力頂き有難う御座いました。